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法律行為について【大阪市・行政書士】

法律行為について【大阪市・行政書士】

2021/09/21

法律行為について

 

1 法律行為について

 

(1)法律行為とは

法律行為とは、権利変動原因(発生・変更・消滅)の一つであり、意思表示を要素とする法律要件のことをいいます。

 

(2)法律行為という概念

法律行為は、具体的な権利変動原因からなる抽象概念であります。

しかし、実際具体的な法律問題を考えるに際しては、法律行為を契約に置き換えて議論されていることがほとんどです。

そうだとすれば、法律行為概念の存在意義とは何であるでしょうか。

 ア.私的自治

私法においては、私的自治という考え方が存在します。私的自治とは、自由な意思によって自らの生活関係を形成することができるという考え方のことをいいます。

そして、日本の民法ではこの私的自治を尊重することが原則とされてきました(私的自治の原則)。この考え方によるならば、法律行為には特別の意味が与えられることになります。

 イ.法律行為概念の存在意義

法律行為の特徴は、当事者の意思表示に基づいて権利変動が認められる点であります。つまり、法律行為は権利の主体である人々が私的自治を私法関係上において実現するための手段であるということが言えます。

そこで、私的自治を私法における基本原則の一つと認める立場からは、法律行為は、権利変動原因のなかで特別の重要性をもつものということになります。法律行為という統括概念を設けることは、私的自治の基本原則性の承認を前提としているともいえます。

 

(3)法律行為の分類

法律行為の分類としては、以下のように分類されるのが一般的であります。

 ア.契約

  i.契約とは

契約とは、目的が対立する複数の意思表示が合致して成立する法律行為のことをいいます。

  ii.契約自由の原則

私的自治の原則によれば、人は、自己の自由な意思によって他者との法律関係を形成することができます。しかしながら、その他者もまた、私的自治の原則から自己の自由な意思による法律関係形成の自由を認められることになります。そのため、必然的に、両者の利害の衝突が起こります。そこで、その利害の調整が必要になるのです。

ところで、契約は当事者が自らの法律関係を自己の自由な意思の合致によって形成する制度であります。つまり、契約は当事者が利害の衝突を自主的に調整する手段と言えるでしょう。

そこで、契約は、当事者の自治に任せるべきであり、原則として法が介入する必要はないという考え方が導かれます。この考え方を、契約自由の原則といいます。

契約自由の原則は次のように分類されています。

①契約締結の自由

②契約の相手方選択の自由

③契約の内容決定の自由

④契約の方式の自由

 イ.単独行為

単独行為とは、一個の意思表示だけで成立する法律行為のことをいう。たとえば、契約の解除や遺言などがある。

 ウ.合同行為

合同行為とは、複数の意思表示が同一の目的のためにされることにより成立する法律行為のことをいう。たとえば、一般社団法人の設立や法人の総会会議などがある。

 

(4)意思表示

 ア.意思表示とは

意思表示とは、一定の法律効果の発生を欲する旨の意思の表明のことをいいます。たとえば、契約の申込みや承諾などがあります。

 イ.意思表示の形成過程

意思表示は、次のような流れで形成されると伝統的に理解されています。

①動機

②効果意思

③表示意識

④表示行為

人は、一定の動機に基づいて意思の内容を決定し、これを外部に表明しようとする意識のもとに、実際の表明行為をするとされます。ここで、動機に基づいて決定される意思を効果意思、その効果意思を表明しようとする意識を表示意識、そして実際の表明行為を表示行為といいます。

 ウ.意思主義と表示主義

意思表示が正常に行われた場合には、法的問題は生じることはありません。しかし、意思表示の成立過程に瑕疵がある場合があります。これを意思表示の瑕疵といいます。

この意思表示の瑕疵にどのように対処するべきかは、意思表示の効力の根拠に対する考え方によって異なります。そして、意思表示の効力の根拠については、意思主義という考え方と表示主義という考え方があります。

  i.意思主義

意思主義とは、意思表示の効力の根拠は、表意者の意思にあるとする考え方であります。これによると、意思表示の瑕疵に対処する際には、表意者の意思が重視されます。

  ii.表示主義

表示主義とは、意思表示の効力の根拠は、表示に対する相手方の信頼保護にあるとする考え方であります。これによると、意思表示の瑕疵に対処する際には、表示行為から推測される意思内容が重視されます。

 エ.意思表示の機能

意思表示は、表意者が自分の欲することを実現するための手段であります。つまり、意思表示には、表意者の意思を実現するという機能(意思実現機能)があります。

もっとも、意思は内心にとどまったままでは他人に認識されることはありません。そのために、意思表示が行われます。つまり、意思表示には意思を他人に伝えるという機能(意思伝達機能)もあるのです。

このように、意思表示は、表意者の意思実現手段であるとともに、相手方への意思伝達手段でもあるといえます。すなわち、意思表示は二つの機能を持っていることになります。そして、意思表示の瑕疵は、表意者が欲したことや欲したはずであることと、相手方が表示行為から推測した意思内容が異なるときに起こるものであります。

そのため、意思表示の瑕疵の処理においては、意思表示の二つの機能のいずれを、どのような場合に優先させるかが問題となります。基本的に、意思実現機能を優先させる立場が意思主義であり、意思伝達機能を優先させる立場が表示主義であります。

 オ.意思表示を構成する基本的価値

意思表示を構成する基本的価値としては、以下のものが挙げられます。

  i.自己決定の尊重

自己決定とは、自己の法律関係を自己の意思によって決めることをいいます。

意思主義は自己決定を重視します。それに対して、表示主義は、自己決定を相対的に軽視することになります。

  ii.相手方の信頼保護

相手方の信頼保護とは、相手方が有するに至った信頼を保護するべきという考え方のことをいいます。

表示主義は、相手方の信頼保護を重視します。それに対して、意思主義は、これを相対的に軽視することになります。

  iii.取引安全の保護

取引安全の保護とは、取引社会の秩序が乱されないようにするべきという考え方のことをいいます。

表示主義は、この取引安全の保護を重視します。それに対して、意思表示は、これを相対的に軽視することになります。

  iv.帰責根拠の必要性

帰責根拠の必要性とは、人に不利益を負わせるには、その負担をやむを得ないとする事情がその者に存することを要するという考え方のことをいいます。

帰責根拠の必要性は、意思表示、表示主義のいずれからも承認されています。

 カ.意思表示の成立

意思表示が存在するというためには、第一に、表示行為の外形が存在する必要があります。第二に、意思表示は表意者に法律効果を生ずるものであるから、表意者に相応の帰責根拠が認められる必要がある。

  i.表示行為の外形の存在

人の態度によっては、意思表示としての外見的明確性の程度に差があります。そして、意思表示としての外見的明確性を表示価値といいます。また、外見的明確性の高い場合を表示価値が大きいと表現されます。

さらに、表示価値の大きい意思表示のことを明示の意思表示、表示価値の小さい意思表示のことを黙示の意思表示といいます。この明示と黙示の差は相対的なものであり、明確な判断基準はありません。

  ii.表意者の相応の帰責根拠

表示行為の外形が存在しても、行為者の意識状態によって、意思表示の成立が妨げられることがあります。なぜなら、法律効果をある者に生じさせるには、その者には、相応の帰責根拠が必要であると考えられるからであります。

 キ.相手方のある意思表示

相手方のある意思表示は、表意者の意思が相手方に伝達されることを必要とします。

相手方のある意思表示は、以下のような過程を経て、相手方に伝達されることになります。

①表意者が効果意思を外部に客観化する(表白)

②意思表示が相手方に向けて発信される(発信)

③意思表示が相手方に到着する(到着)

④相手方が意思表示の存在と内容を実際に知る(了知)

  i.意思表示の効力発生時期

意思表示の効力発生時期は、以上の表白、発信、到着、了知のいずれかの時点でしょうか。このうち、表白と了知の時点は考えられません。

この結果、意思表示の効力発生時期として問題になるには、発信か到着の時点となります。発信の時点で意思表示の効力発生を認める考え方を発信主義、到着の時点で認める考え方を到着主義といいます。

これらの考え方のいずれを採用するかについては、民法は、到達主義を原則としています。理由としては、相手方が意思表示の存在と内容を知ることができない時点で意思表示の効力を生じさせるのは、相手方にとって不利益であることが考えられるからです。

ただし、例外として発信主義が採用されている場合もあります。たとえば、現行民法上では、契約の承諾について発信主義が採用されています。

  ii.意思表示の受領能力

民法は、意思表示の相手方が意思表示の受領時に未成年者や成年被後見人であったときには、その意思表示をその相手方に対抗することができないとしています。したがって、未成年者や成年被後見人を相手方とする意思表示は、その法定代理人に対して、未成年者や成年被後見人のためであることを示してするべきであります。

 

(5)法律行為の解釈

 ア.法律行為の解釈とは

法律行為の解釈とは、法律行為の内容を確定させるための作業のことをいいます。

 イ.法律行為の解釈の種類

  i.狭義の解釈

法律行為は、当事者が自由な意思に基づいて自己の権利義務を定めるものであります。そのため、法律行為の内容は、主として、その構成要素である意思表示の内容によって定まることになります。したがって、法律行為の解釈においては、まず、当事者の行った意思表示の内容を確定させる必要があります。この作業を狭義の解釈といいます。

狭義の契約解釈の方法についての主要な考え方は客観説と付与意味基準説の二つです。

客観説は、当事者の表示行為の社会的意味を明らかにする考え方で、理由付けは、取引安全の保護であります。

一方、付与意味基準説は、当事者が問題となる意思表示に付与した意味を探求する考え方で、理由付けは、契約の拘束力の前提が当事者の意思にあることから、当事者の意思を重視すべきというものであります。

ただし、客観説も当事者の主観は考慮するし、付与意味基準説も客観的な推論を用いると理解されています。つまり、二つの説の違いはそれほど大きくはありません。

  ii.法律行為の補充

狭義の契約解釈をすることによって、当事者が何を合意していないのかも明らかになります。そして、当事者が合意していない事項については、それを補充することが必要になる場合があります。

そこで、合意の欠如を補充するための法規範があります。特に重要なものは、任意規定と慣習です。

契約の補充は、契約の主要部分について当事者に合意がある場合に、その効力を維持するために行われることになります。そうだとすれば、当事者が合意していなかった事項についても、当事者による契約の趣旨が明らかであるならば、契約外の法規範によって補充するのではなく、その契約の趣旨にそって補充が行なわれるベきであります。このように、契約の趣旨にそって補充することを、補充的契約解釈といいます。

  iii.法律行為の修正

当事者の合意内容が不適切と判断される場合に、裁判所が当事者の合意を修正して別の内容に置き換えることがあります。すなわち、契約の修正は、当事者の合意を他者である裁判所が変更するものであり、私的自治への介入にあたります。

 

(6)準法律行為とは

準法律行為とは、通常の意思表示とは異なるが法律行為に準ずるものとして一定の法律効果を生じる行為をいいます。準法律行為は、意思の通知と観念の通知に分類されます。

 ア.意思の通知

意思の通知とは、法律効果の発生を目的としない意思の発表のことをいいます。たとえば、催告や弁済の受領拒否などがあります。

 イ.観念の通知

観念の通知とは、一定の事実の通知で、意思の発表という要素を含まないものをいいます。たとえば、債務の承認や債権譲渡の通知・承諾などがあります。

 

2 法律要件・法律効果について

 

(1)法律要件とは

法律要件とは、一定の法律効果を発生させるために、その効果を定める法律で規定されている一定の条件のことをいいます。

また、法律要件は、通常、数個の要素からなる。そして、これらの要素に該当する具体的事実を要件事実といいます。

 

(2)法律効果とは

法律効果とは、具体的な事実が法律要件を充足することによって生じる、法律上の効果のことをいいます。

 

3 法律行為の有効性について

 

法律行為によって法律効果を発生させるためには、一定の要件を充足させる必要があります。

それらの要件は、以下のように整理できます。

①成立要件

②有効要件

③効果帰属要件

④効力発生要件

 

(1)成立要件

成立要件とは、法律行為が成立するための要件をいいます。したがって、成立要件が充足していなければ、法律行為自体が成立していないことになります。当然、法律効果は発生しないことになります。

法律行為が成立するには、当事者の意思表示が必要です。契約の場合は、申込みと承諾の意思表示の合致が必要となります。

そして、原則として法律行為は意思表示により成立します。ただし、例外として意思表示に加えて、目的物の接受(要式契約)や一定の方式(要式行為)が必要となる場合があります。

なお、意思表示が不存在の場合は、法律行為は不成立となります。

 

(2)有効要件

有効要件とは、法律行為が、さらに有効となるための要件をいいます。法律上の有効とは、法的保護に値するから法律効果が発生するという意味です。これに対して、無効とは法的保護に値しないから、そもそも法律効果が発生しないということです。

法律行為が有効であるためには、無効原因や取消原因が存在しないことが必要となります。

そして、法律行為の有効要件は、法律行為の内容に関する要件(客観的有効要件)と意思表示に関する要件(主観的有効要件)に分類されます。

 ア.客観的有効要件

法律行為の内容に関する有効要件は、以下が挙げられます。

①確定性

②実現可能性

③適法性

④社会的妥当性

 イ.主観的有効要件

意思表示に関する有効要件は、以下が挙げられます。

①権利能力・意思能力・行為能力が存在していること

②意思の不存在・瑕疵ある意思表示でないこと

 

(3)効果帰属要件

効果帰属要件とは、有効に成立した法律行為の効果が本人に確定的に帰属するための要件をいいます。

効果帰属要件は、行為者が代理人として本人のために法律行為を行った場合に問題となります。

そして、行為の効果を本人に帰属させるためには代理権や処分権が必要です。これらの権限のない代理行為は、原則として、本人に効果が帰属しません。

ただし、例外として表見代理の規定が適用されて(代理権授与の表示による表見代理(109)、権限外の行為の表見代理(110)、代理権消滅後の表見代理(112)の3類型がある。)、代理権を有しない者が本人のために法律行為を行った場合でも本人に効果が帰属することがあります。

 

(4)効力発生要件

効力発生要件とは、ある法律行為が法律効果を発生するために法律上特に要求されている要件をいいます。

法律行為が有効に成立したとしても、その効力発生のためには、一定の要件を充足させなければならない場合があります。

一般的な効力発生要件としては、条件や期限の規定があります。これらは、当事者の意思表示によるものであるが、個別的に規定されている効力発生要件(344、985など)もあります。

 

(5)対抗要件

対抗要件は、成立後の法律関係・権利関係において問題となります。そのため、法律行為の有効性に関する要件とはいえません。しかし、法律行為の内容を実現するという視点から見ると、法律行為の有効性と関連付けて理解するのも大切です。

対抗要件とは、すでに当事者間で成立した法律関係・権利関係を当事者以外の第三者に対して対抗するための法律要件をいいます。

対抗要件が定められている具体例として以下のものが挙げられます。

①物件変動

②債権譲渡

③不動産賃借権

④株式譲渡

⑤法人設立

 

 

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